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育成就労制度の転籍ルールを分野別に解説|受入企業が知っておくべきポイント

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2027年4月施行の育成就労制度では、技能実習制度で原則禁止されていた「転籍(転職)」が条件付きで認められるようになります。転籍制限期間は分野ごとに1年または2年と異なり、受入企業にとって人材の定着戦略に直結する重要テーマです。本記事では、分野別の転籍ルールと受入企業が押さえるべきポイントを詳しく解説します。

転籍とは? ― 技能実習制度との最大の違い

「転籍」とは、育成就労制度において外国人労働者が現在の受入企業を離れ、別の企業に移ることを指します。日本人の「転職」に相当する概念ですが、育成就労制度では一定の条件を満たす必要があります。

技能実習制度と育成就労制度の転籍に関する違いは以下の通りです。

項目 技能実習制度 育成就労制度
転籍の可否 原則禁止 条件付きで許可
やむを得ない事情 例外的に認められる 即時転籍が可能
本人意向の転籍 認められない 要件を満たせば可能
制度の目的 技能移転(国際貢献) 人材育成+人材確保

技能実習制度では、劣悪な労働環境に置かれても事実上転職できない構造が人権問題として長年指摘されてきました。育成就労制度では、労働者の権利保護と人材育成のバランスを取る形で、条件付きの転籍が認められます。

分野別の転籍制限期間

育成就労制度の対象は17分野です(特定技能19分野から航空・自動車運送業を除く)。本人意向による転籍が可能になるまでの最低就労期間が分野ごとに定められており、技能の修得に時間がかかる分野は2年、比較的早期に基礎技能を習得できる分野は1年と設定されています。

転籍制限2年の分野(8分野)

転籍制限期間:2年(技能修得に時間を要する分野)
① 介護 ② 建設
③ 工業製品製造業 ④ 造船・舶用工業
⑤ 自動車整備 ⑥ 飲食料品製造業
⑦ 外食業 ⑧ 資源循環

転籍制限1年の分野(9分野)

転籍制限期間:1年
① ビルクリーニング ② リネンサプライ
③ 宿泊 ④ 鉄道
⑤ 物流倉庫 ⑥ 農業
⑦ 漁業 ⑧ 林業
⑨ 木材産業

ポイント

2年制限の分野であっても、受入企業が任意で1年に短縮することが可能です。自社の人材定着に自信のある企業は、あえて制限を緩和することで求職者へのアピールにつなげることもできます。なお、「工業製品製造業」は旧称「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」を統合した分野です。

2年制限分野に求められる昇給義務

転籍制限期間を1年を超えて設定する分野(上記の8分野)では、育成就労外国人の待遇向上措置が義務付けられています。具体的には以下のルールが定められています。

  • 昇給率の設定・公表:各分野の分野別協議会が毎年、当該分野における育成就労実施者の賃上げ率を基準にした昇給率を設定・公表します
  • 所定内賃金の昇給義務:2年の転籍制限を適用する企業は、在籍する育成就労外国人の所定内賃金を1年目から2年目にかけて、分野別協議会が定める昇給率以上で昇給させなければなりません
  • 企業の選択肢:昇給義務を避けたい場合は、企業の判断で転籍制限期間を1年に短縮することも可能です

企業にとっての意味

つまり、2年間人材を確保したい企業には昇給義務が伴います。「2年間は転籍できないから待遇を据え置く」ということはできず、長く働いてもらうためには相応の処遇改善が必要という設計になっています。

転籍の2つの種類

育成就労制度における転籍は、大きく「やむを得ない事情による転籍」「本人意向による転籍」の2種類に分かれます。

1. やむを得ない事情による転籍

以下のような事情がある場合、就労期間に関係なく即時に転籍が認められます

  • 受入企業による労働契約違反(賃金未払い、契約内容との相違等)
  • 人権侵害行為(暴力、ハラスメント、パスポート取り上げ等)
  • 受入企業の経営破綻・事業廃止
  • その他、外国人育成就労機構が認めるやむを得ない事情

注意

やむを得ない事情による転籍は、技能実習制度でも例外的に認められていましたが、実際には転籍手続きの困難さから「失踪」を選ぶ実習生が後を絶ちませんでした。育成就労制度では手続きの透明化と迅速化が図られます。

2. 本人意向による転籍

育成就労制度で新たに導入される仕組みです。「より良い環境で働きたい」「キャリアアップしたい」といった本人の希望に基づく転籍が、以下の要件をすべて満たすことで認められます。

本人意向による転籍の4つの要件

1

就労期間の充足

同一の受入企業で、分野ごとに定められた期間(1年または2年)以上継続して就労していること。この期間は「同一企業」での就労が条件であり、他の育成就労先での期間は通算されません。

2

技能検定基礎級+日本語N5の合格

技能検定試験基礎級(またはこれに相当する試験)と、日本語能力試験N5相当以上の両方に合格していること。なお、分野によってはより高い日本語レベルが求められる場合があります。

3

同一業務区分内での転籍

転籍先の業務は、転籍元と同一の業務区分でなければなりません。例えば、介護分野で就労していた場合、転籍先も介護分野の企業である必要があります。まったく異なる分野への転籍はできません。

4

転籍先の要件を満たすこと

転籍先の企業は「優良な育成就労実施者」の基準を満たす必要があります。また、転籍者の受入割合に上限があり、在籍する育成就労外国人全体の3分の1以下でなければなりません。さらに、大都市圏(指定区域外)の企業が地方(指定区域内)から転籍者を受け入れる場合は6分の1以下に制限されます。転籍はハローワーク等の公的機関を通じた手続きが必要です。

転籍時の補償費用制度

本人意向の転籍が行われた場合、転籍先企業が転籍元企業に対して補償費用を支払う仕組みが導入されます。これは、転籍元企業が負担した初期費用(渡航費、来日前講習費、住居準備費等)を適正に補填するための制度です。

転籍元での就労期間 按分率 意味
1年6月未満 5/6(約83%) 初期費用の大部分を補償
1年6月以上 2年未満 2/3(約67%) 初期費用の約3分の2を補償
2年以上 2年6月未満 1/2(50%) 初期費用の半分を補償
2年6月以上 1/4(25%) 長期就労後のため少額

ポイント

この補償制度により、転籍元企業の初期投資は一定程度保護されます。一方で、転籍先企業にとっても「すでに1〜2年の実務経験と日本語力を持った即戦力人材」を獲得できるメリットがあります。

受入企業が注意すべき5つのポイント

1. 「転籍されない企業」になるための努力

育成就労制度では、労働環境が優れた企業に人材が集まる傾向が強まります。転籍を防ぐには、適正な賃金・待遇、良好な職場環境、キャリア形成支援が不可欠です。「転籍を制限する」のではなく「転籍したいと思わせない」環境づくりが重要です。

2. 特定技能への移行を見据えた育成計画

育成就労は最長3年ですが、特定技能1号(5年)、さらに2号(上限なし)への移行パスが制度に組み込まれています。長期的なキャリアビジョンを共有することが、人材の定着につながります。

3. 転籍受入れも選択肢に

他社での就労経験がある人材を転籍で受け入れることも可能です。即戦力を確保できるメリットがありますが、転籍元企業への補償費用の支払いが発生します。コスト対効果を考慮した判断が求められます。

4. 監理支援機関との連携強化

育成就労制度では、旧来の監理団体が「監理支援機関」となり、外部監査人の設置が義務化されるなど要件が厳格化されます。転籍に関する相談対応や手続き支援も監理支援機関の業務に含まれるため、信頼できる機関を選ぶことが重要です。

5. 地方企業の人材確保対策

転籍の柔軟化により、都市部の企業に人材が流出するリスクが懸念されています。制度上、大都市圏の企業が地方からの転籍者を受け入れる割合は6分の1以下に制限されるなどの措置がありますが、地方企業は住環境のサポートや地域コミュニティとの橋渡しなど、独自の魅力づくりが求められます。

まとめ

育成就労制度における転籍ルールは、「労働者の権利保護」と「受入企業の育成投資の保護」のバランスを取る形で設計されています。

  • 転籍制限期間は分野により1年または2年(受入企業の任意短縮も可能)
  • 2年制限の分野は昇給義務が伴う(分野別協議会が毎年昇給率を設定)
  • 本人意向の転籍には技能試験・日本語試験の合格等の要件あり
  • 転籍時には補償費用制度により転籍元企業の初期投資が保護される
  • 企業の競争力は、転籍を制限することではなく、選ばれる職場をつくることにある

2027年4月の施行に向けて、受入企業は早い段階から職場環境の整備と育成計画の策定を進めておくことをお勧めします。

出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領」(令和8年2月)/ 分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)

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